有機村では5月15日、健康増進に必要な食物養生(食養論)と東洋思想の陰陽論に基づくマクロビオティックのお話会を開催しました。普及啓発に取り組む高桑智雄さん(桜沢如一資料室室長)を東京からお招きし、成り立ちや考え方、食べ方などについて話していただきました。高桑さんは食べ方について「細かく決まっているわけではありません」とした上で、マクロビオティックを世界へ広めた桜沢如一氏(1896~1966年)が示した食養の基本を紹介されました。以下講演内容より。
「主食の理想は玄米。糠を取らない半つき、三分つき米でも可です。副食はその土地の野菜や野草を主とし、ご飯の3分の1から5分の1以下が適当です。時や所、場合によっては、野菜の3分の1以下で鳥、魚肉、玉子などを加えても良い。味は塩気と油気で。原則として、地域産品や季節ものでないもの、白米、白パン、獣肉、砂糖、果実、菓子、牛乳は摂りません(健康面で不要ですが、食べるなら嗜好品として節度を持って)」
「マクロビオティックでは食材の配分を10段階に分けていて、目分量で穀物が60%、野菜の煮つけ30%、みそ汁10%のバランスの中で、穀物量60%~80%が基本食です(飲み物は常に少なく)。穀物が100%に近づく(野菜を減らす)ほど最高食になります。一方、穀物が50%以下だと、野菜の煮つけ30%、みそ汁10%、動物性食品(10%)と初めて動物性が必要になります。まとめると穀物を中心に食べれば健康が確立されます。ただし、よく噛んで、腹八分目に」
【マクロビオティックとは】
「一般に食事制限などのストイックなものともみられていますがこれは誤解。単なる食事法ではなく、陰陽の考え方に基づき柔軟に取り組める生活法です。健康増進のための食物養生(食養論)と東洋思想の陰陽論を基に明治期に日本で生まれ、世界各国へ普及しています」
「欧米やインドのベジタリアン、ビーガンとは歴史的背景が違います。日本人は2000年前から、主食に穀物、副食を野菜と魚などとする『和食文化』を確立。これに江戸時代に発展した東洋の養生思想が加わりマクロビオティックの世界観ができ、その後、発展し現在に至ります」
【食養論の考え方】
「和食中心の食物養生は、健康増進、疾病予防、自然治癒、老化防止などを促す手段で、病気にならないための生活法です。明治時代の軍医だった石塚左玄(1851~1909年)氏がこれを『食物養生法』に発展させました」
「食べ物がひとをつくる『食物至上論』、飯7割で(野菜や小魚などの)副食3割の『穀物動物論』、土地柄と季節に合ったものを食べる『風土食論』(身土不二)、採れたものを丸ごと食べる『自然食論』(一物全体)、健康に影響する食物中のナトリウムとカリウムの調和を図る『陰陽調和』を提唱しました」
【マクロビオティックへの進化】
「戦後(第二次世界大戦後)、食物養生法を『マクロビオティック』と訳して世界へ広めたの
が桜沢如一氏です。桜沢氏は食養の普及に加え、すべての現象を求心力の『陽』、遠心力の『陰』でみる『陰陽論』を唱え、健康と平和の確立へ尽力しました。その思いは、西洋の肉食過剰などによる攻撃性が起こした戦争を二度と繰り返さないようにーーということでした」
「桜沢氏は1957年、東京にマクロビオティックの普及団体『日本CI協会』を設立。桜沢氏の妻で後継者の桜沢里真氏(1899~1999年)は、65年に協会内に料理教室を開校するなど食養料理を国内外で通用する華やかな料理に進化させました」
【食養論の原則ー穀物採食の理由】
「人の歯は32本中20本が穀物をすりつぶす『臼歯』であることや、イモ類などのデンプン質の食物が脳を進化させる栄養源とされることなどから、穀物採食が基本となります。ただ、石塚氏は、日本では玄米を主食とする場合、動物性食材は不要としました」
【食養論の原則ー身土不二、一物全体、陰陽調和】
「身土不二は、暮らしている地域で採れるものや季節のものを食べること。一物全体は食材を丸ごと食べることで、米ならビタミンやミネラルが豊富な胚芽の部分を落とした白米でなく、『米粒全体』の『玄米』を、魚は丸ごと食べられる小魚を良しとします」
「陰陽調和はマクロビオティックの基盤。季節が夏(陽性)なら、季節の陰性の食べ物(トマトなどの夏野菜)で体を冷やし陰陽を調和します(身土不二)。大根の中心は陽性で周辺や皮は陰性。まるごと食べて陰陽を調和します(一物全体)。この調和が健康をもたらします」
参加者のみなさんの講義後の感想も、マクロビオティックの偏見に気付き考え方が変わったとのお声が多かったです。今後もまたマクロビオティックの講座を開催していけたらと思います。